DGL 宝石について - 宝石の鑑別・宝石の鑑定
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鑑別、鑑定とは

宝石における「鑑別」とは、その宝石がどういう物質(鉱物や有機物)で、何と呼ぶべき宝石なのか、また場合によってはどんな処理が加えられているのかを、専門家がさまざまな機器を使いながら、測定、検査、判断する作業を指しています。そしてその結果が記載された書面のことを「鑑別書(Gem Identification Report)」と呼びます。

一方、宝石における「鑑定」とは、その宝石がどれくらいの値打ち(市場価格)なのかを専門家が値踏みすることを指していましたが、日本国内において今日一般的には、GIA(Gemological Institute of America)の卒業資格を持った専門家がさまざまな機器を使いながら、測定、検査し、ダイアモンドにGIAの定めたグレードをつける(グレーディング)作業のことをさしています。その結果を記載した書面を「鑑定書(Grading Report)」と呼びます。これには市場価格のような値打ちは表記されません。
場合によりさらに、ハート&キューピッド、トリプルエクセレントなどの追加検査などもおこなわれます。

また、鑑別書・鑑定書の前段階として、宝石の商取引に必要な最低限の鑑別・鑑定を行うことやその結果を「ソーティング」と呼びます。
よく小売店などで発行されている「保証書」等と呼ぶものは、その店が販売した宝石が、表示や説明に相違ないことを保証するものが一般的です。

鑑別、鑑定を理解する上で重要なことは、それらが「一般環境における非破壊検査」であるということです。そしてお客様に「早く、適正な価格」で応えられるよう検査方法に工夫がされています。また、宝石は常に外部からの影響や時間により変化・変質していく可能性がありますので、鑑別、鑑定の結果には恒久性がありません。


宝石と鉱物

宝石名と鉱物名

宝石名と鉱物名宝石は、ダイアモンドやエメラルドなど鉱物などの無機物質に属するものと、真珠・琥珀など有機物に属するものがあります。さまざまな鉱物にはそれぞれ鉱物名があり、それと宝石名が同じであることもありますが、多くは鉱物名と違った宝石名がつけられてきました。たとえばエメラルドおよびアクアマリンはともに「ベリル」と呼ばれる鉱物であり、ルビーおよびサファイアはともに「コランダム」とよばれる鉱物です。

宝石の条件

道にある小石、庭園にある石、大きな岩山、これらも鉱物によってできています。ではこれらのものと宝石との違いは何でしょうか?
例外はありますが、宝石と呼ばれるのには一般に以下の4つの条件が必要とされています。これらの条件を満たしたものが宝石なのです。

  • 1.希少性 限られた量及び地域で産出し、入手が難しく珍しいもの
  • 2.耐久性 ある程度の硬さや粘りがあり、簡単には壊れないもの
  • 3.携帯性 小さくて運びやすいということ
  • 4.審美性 見た目に美しいということ

またこれら以外に、歴史的、社会的な影響で珍重される要素を加えて宝石の条件とすることもあります。


宝石の真贋

合成石、人造石、模造石

「にせもの」「イミテーション」などの言葉がありますが、装飾用に使われる物質には天然の宝石との見かけを同じくするさまざまなものがあります。

「合成石」とは、天然の宝石と同じ成分、同じ生成過程で人工的に作られた物質です。そのためかなりの時間やコストがかかっています。合成石はその成分、生成過程が天然のものと同じため、鑑別を行うのに困難を要する場合もあります。合成ルビー、合成エメラルドなどさまざまなものが作られています。

「人造石」とは、天然には存在しない物質を人工的に作り出した石を指します。キュービックジルコニアなどがこれにあたります。

「模造石」とは、天然の宝石とは全く違う物質をさまざまな方法でそれらしく見せたものをいいます。その際には、ガラスや樹脂などがよく利用されます。また張り合わせなどで一部にだけ天然石を使っている場合もあります。

処理石

天然の宝石を、より美しく評価の高いものの状態に、人工的に色彩などを変化させたものをさします。方法としては、加熱、加圧、含浸、放射線照射、コーティング、着色などが代表的です。
これらの処理技術は日々進歩しているために、鑑別鑑定も以前より複雑になってきています。そのために通常の鑑別・鑑定作業に加え、別途特殊検査を行うことも増えてきています。また通常の鑑別書では表記できない項目を「分析報告書」などで補うこともあります。


ダイアモンドのグレーディング

GIA方式

ダイアモンドのグレーディングダイアモンドのグレーディング(鑑定)において、日本国内及び諸外国で一般的なものが、「GIA方式」です。
GIA(Gemological Institute of America)とは米国に本部を置く宝石学会のひとつであり、宝石の研究、教育、鑑別鑑定などを行っており、アジア各国にも支部があります。

そのグレーディングでは下記のように、「4C」と呼ばれる主な項目に加え、さらに3つの項目を測定検査します。

1.重量(Weight)

ダイアモンドは一個一個が電子天びんで小数点三位まで計量されます。レポートには小数点以下二位表示(第三位は切り捨て)あるいは第三位までを表示しています。単位は宝石の重量を表すCT.(キャラット)で1CT.は0.2gです。

2.カラーグレード(Color Grade)

ダイアモンドは大多数のものが黄色や褐色を含んだボディーカラー(地色)を有しています。カラーグレードの検査では無色を最高として、わずかずつ黄色味や褐色味を増していく度合いによって等級分けがなされています。当ラボでは最高級マスターダイヤモンド(JJA/AGL認定マスターストーン・セット)を使用し、適切な照明条件の下でダイヤモンドのボディーカラーを検査しGIA基準に基づいて表示しています。まったくの無色をDとし黄色味や褐色味が増す毎にZまで23段階に分類されています。黄色味や褐色味以外のカラー(ピンクやブルー等)の場合はファンシーカラーといい全く別のカテゴリーとしてグレードされます。

カラーグレーディングスケール

3.クラリティーグレード(Clarity Grade)

ダイアモンドには内部、外部ともに全くインパーフェクション(キズ)のないものはほとんどありません。この項目では双眼顕微鏡10倍率の下で、上下左右あらゆる方向から検査し、インパーフェクションの大きさ、数、位置、色、性質を考慮しGIA(米国宝石学会)基準に基づいてグレードを決定します。GIA基準では11段階に分類されています。

クラリティーグレーディング スケール

■ FL(フローレス)
熟練者は色収差及び球面収差が修正された双眼顕微鏡の下でいかなるインパーフェクションも発見できない場合フローレスとグレードします。但し極小の外部のキズが一定条件内で存在する場合もフローレスとします。
■ IF(インターナリーフローレス)
内部フローレスの事で内部のキズは全くないが、軽微で目立たない表面のインパーフェクションがある場合インターナリーフローレスとします。
■ VVS1・VVS2
熟練者が見るとなんらかのインパーフェクションはあるが10倍率では大変発見が困難な場合その程度に応じてVVS1かVVS2のどちらかにグレードします。
■ VS1・VS2
比較的発見しやすいがインパーフェクションそのものがあまり大きくなく範囲が広がってないような場合その程度に応じてVS1かVS2にグレードします。
■ SI1・SI2
10倍率で容易に発見できるインパーフェクションがある場合その程度に応じてSI1・SI2のどちらかに分類します。石のサイズにもよりますが熟練者であれば肉眼でも見える場合もあります。
■ I1・I2・I3
10倍率ではっきりインパーフェクションが確認され、テーブル方向からでも肉眼で発見できます。また顕著なフェザーを含む場合もあります。

4.カットグレード(Cut Grade)

自動測定機(OGI Systems社MegaScope、Sarin Technologies社DiaMention)を使用して各ファセットのサイズや角度を計測し、それらのデータをもとにGIA Facetware TM Cut Estimator Databaseにより推定カットグレードを求めます。検査項目の詳細は以下の通りです。

カットグレード

カットスケール

その後宝石専用双眼顕微鏡(10倍率)の下で目視による検査が加わり「カット グレード」が決定されます。目視評価の対象となる要素はガードルの厚さ(各部の最大・最小)、キューレットサイズ、ポリッシュ(研磨の状態)、シンメトリー(各ファセットの形や対称性等)です。

5.寸法(Measurement)

自動測定機(イスラエル・オギ社 メガスコープ、同サリンテクノロジー社ダイヤビジョン)を使用し、形状がラウンドのダイアモンドは直径の8方向を測定しレポートには最大値-最小値×深さ(単位m/m)を表示しています。ファンシーカットに関しては、長さ-幅×深さ(単位m/m)を計測に表示しています。

寸法図

6.カット形状(Shape & Cut)

ダイアモンドのカット形状には様々な形がありますが、主には以下の6種類が一般的です。その中でも特にポピュラーなものは現在のダイアモンド市場の大部分を占めるラウンドブリリアントカットで、最も強い輝きを得ることができると言われています。以下の主なカット形状のイラストからもわかるように、エメラルドカット以外はおおむねラウンドブリリアントカットから派生しているのがわかります。なおラウンドブリリアントカット以外の形状を総称してファンシーカットとも表現します。

Round Brilliant Cut
ラウンド ブリリアント カット
ラウンド ブリリアント カット 図
Emerald Cut
エメラルド カット
エメラルド カット 図
Marquise Brilliant Cut
マーキーズ ブリリアント カット
マーキーズ ブリリアント カット 図
Heart Brilliant Cut
ハート ブリリアント カット
ハート ブリリアント カット 図
Pear Brilliant Cut
ペア ブリリアント カット
ペア ブリリアント カット 図
Oval Brilliant Cut
オーバル ブリリアント カット
オーバル ブリリアント カット 図

7.蛍光性(Fluorescence)

目に見えない放射線(X線・紫外線・陰極線等)やある種の可視波長の光線を物質照射した時に物質が発する可視波長の光のことです。当ラボでは長波紫外線(365nm)を暗箱の中でダイアモンドに照射しその反応を表示します。

その他の方式

世界にはGIAの他に、下記のように独自の鑑別鑑定の方式を持つ法人がありそれぞれ違ったグレーディング方式があります。

<AGS>American Gem Society
<HRD>HRD Antwerp Institute of Gemmology
<IGI>International Gemological Institute
<EGL>European Gemological Laboratory
<GÜBELIN>GÜBELIN GEM LAB
<GRS>Gem Resarch Swisslab

トリプルエクセレント(3EX)とは

ダイアモンドのカットグレードは自動測定器により推定グレードを出した後に、目視によりガードル厚、キューレットサイズ、ポリッシュ(研磨状態)、シンメトリー(対称性など)を検査します。
その結果全体のプロポーション、ポリッシュ、シンメトリーのすべてにおいてエクセレント(Exellent)であるとされた時に、その石を特に「トリプルエクセレント(3EX)」と呼ぶことがあります。

ハート&キューピッド

プロポーションやシンメトリーが比較的良いダイアモンドの中には、特殊なスコープを通して、テーブル方向より見ると8方向に並んだハートに似た形、キューレット側からは同じく8方向に並んだ矢に似た形を観察できる場合があります。この現象を一般に、ハート&キューピッドといった呼び方がされています。